植物の開花を操る、光周性という魔法
植物の開花を操る、光周性という魔法
ガーデニング勉強中
先生、「光周性」って言葉は知ってるんだけど、具体的にどういうものか教えてください。
ガーデニング専門家
そうだね。「光周性」は、植物が1日のうち、光の当たる時間と暗い時間のバランスを感じて、花を咲かせたり、成長したりする性質のことだよ。
ガーデニング勉強中
光の当たる時間と暗い時間のバランスで変わるんですか?
ガーデニング専門家
そうだよ。例えば、キクは夜が長くなると花を咲かせる性質があるんだ。だから、夜に電気を当てて明るい時間を長くすると、花が咲くのを遅らせることができるんだよ。
光周性とは。
園芸で使われる言葉で「光周性」というものがあります。これは、植物が1日のうち、明るい時間と暗い時間の割合や、日の長さによって、そのふるまいや成長の仕方が変わる性質のことです。特に、花を咲かせるために必要な「花芽分化」は、この光周性によるものが多く、この性質を利用することで、花を咲かせる時期を調整することができます。植物は主に葉っぱで光を感じ取ります。光を感じてから花を咲かせるまでの仕組みについては、「フォトクローム」や「内生リズム」といった説によって説明が試みられていますが、まだ完全には解明されていません。
光周性とは?
– 光周性とは?
植物は、まるで動物のように季節の変化を感じて、花を咲かせたり、葉を落としたり、休眠したりします。では、どうやって季節の変化を感じ取っているのでしょうか? 実は、植物は日の長さや、昼と夜の時間のバランスの変化を感じ取ることで、季節の移り変わりを認識しているのです。これを-光周性-と呼びます。
植物は、葉に含まれる特殊な色素を使って、光の量や時間の長さを測っています。そして、その情報をもとに、花を咲かせるホルモンを作ったり、成長を止めたりするホルモンを作ったりして、自らの行動を調節しているのです。
例えば、秋に花を咲かせるキクは、日が短くなっていくことを感じて花芽をつけ始めます。逆に、春に花を咲かせるセイヨウタンポポは、日が長くなっていくことを感じて花芽をつけます。このように、植物は光周性によって、適切な時期に花を咲かせ、種子を作ることができるのです。
光周性は、植物が厳しい自然環境の中で生き抜くために身につけた、巧みな生存戦略と言えるでしょう。
項目 | 説明 |
---|---|
光周性とは | 植物が日の長さや昼夜の時間バランスの変化を感じ取ることで季節の移り変わりを認識し、自身の行動を調節する性質のこと |
仕組み | 葉に含まれる特殊な色素を使って光の量や時間の長さを測定し、ホルモンを分泌して開花時期などを調節する |
例 | – 秋に開花するキクは、日が短くなることを感じて花芽をつける – 春に開花するセイヨウタンポポは、日が長くなることを感じて花芽をつける |
役割 | 適切な時期に花を咲かせ、種子を作るための生存戦略 |
開花への影響
– 開花への影響
植物が花を咲かせるためには、適切な温度や水、栄養分などの条件が必要ですが、光も重要な役割を果たします。特に、一日のうちで日の光を浴びる時間の長さ、つまり日長は、植物に季節の変化を知らせ、開花時期を決定づける重要な要素となります。
この、日長と開花の関係を光周性といい、多くの植物が開花時期を決める上で、この光周性に影響を受けています。例えば、春に咲く花は、冬の終わりから徐々に長くなっていく日照時間を感知して、花芽を形成し始めます。そして、気温も上昇し、春になり、十分な日照時間を浴びられるようになると、満を持して花を咲かせるのです。
逆に、秋に咲く花は、夏至を過ぎてから徐々に短くなっていく日照時間を感知して花芽を形成し始め、気温が低下し始める頃に開花します。このように、植物は、光周性によって季節の変化を敏感に感じ取り、適切な時期に花を咲かせることで、受粉を成功させ、子孫を残す確率を高めているのです。
要素 | 説明 | 例 |
---|---|---|
光周性 | 一日のうちの日光を浴びる時間の長さ(日長)と、植物の開花の関係 | – |
春咲きの花 | 冬の終わりから徐々に長くなる日照時間を感知して開花 | – |
秋咲きの花 | 夏至を過ぎてから徐々に短くなる日照時間を感知して開花 | – |
光周性の種類
植物は、日の長さの変化を感じ取って花を咲かせる時期を決める性質、光周性を持っています。そして、この光周性の反応によって、植物は大きく三つの種類に分けられます。
まず一つ目は、短日植物と呼ばれるものです。短日植物は、その名の通り、一日のうちで日の当たっている時間が一定時間より短くなると花を咲かせます。代表的なものとしては、秋に咲くコスモスやキクなどが挙げられます。これらの花は、日が短くなることを感じ取って、秋が来たことを知り、花を咲かせる準備を始めるのです。
二つ目は、長日植物です。長日植物は、一日のうちで日の当たっている時間が一定時間より長くなると花を咲かせます。春から夏にかけて花を咲かせるものが多く、アヤメやコムギなどがその代表です。これらの花は、日が長くなることを感じ取って、春が来たことを知り、花を咲かせる準備を始めるのです。
そして三つ目は、中性植物です。中性植物は、日の長さには関係なく、気温や水などの条件が整えばいつでも花を咲かせることができます。トマトやキュウリなどがその代表です。これらの植物は、日の長さにとらわれず、いつでも花を咲かせて実をつけることができるので、私たちの食生活を支える上でとても重要な役割を担っていると言えるでしょう。
このように、植物は光周性によって花を咲かせる時期を上手に調節し、それぞれの環境に適応しているのです。
植物の種類 | 花を咲かせる条件 | 代表的な植物 |
---|---|---|
短日植物 | 一日のうちで日の当たっている時間が一定時間より短くなると花を咲かせる | コスモス、キクなど |
長日植物 | 一日のうちで日の当たっている時間が一定時間より長くなると花を咲かせる | アヤメ、コムギなど |
中性植物 | 日の長さには関係なく、気温や水などの条件が整えばいつでも花を咲かせる | トマト、キュウリなど |
農業への応用
– 農業への応用
植物が持つ光に対する反応は、農業において収穫時期を調整するために活用されています。
例えば、秋に咲くイメージの強い菊は、日が短くなることで花を咲かせる短日植物です。しかし、電灯を用いて日照時間を人工的に長くすることによって、菊の開花を遅らせることができます。この技術は電照栽培と呼ばれ、開花時期をコントロールすることで、需要が高まる時期に合わせて菊を出荷することが可能になります。
逆に、長い日照時間を必要とする長日植物の場合には、電灯を用いて日照時間を長くすることで、開花を早めることができます。例えば、菠薐草は長日植物なので、春から夏にかけて日が長くなるにつれて花を咲かせます。しかし、電照栽培を用いることで、冬場でも菠薐草の成長を促進し、収穫時期を早めることが可能になります。
このように、光周性を利用した技術は、農業生産を安定させ、需要に合わせて計画的に作物を供給するために重要な役割を担っています。
植物の例 | 種類 | 電照栽培の効果 | 農業への応用 |
---|---|---|---|
菊 | 短日植物 | 日照時間を人工的に長くすることで開花を遅らせる | 需要が高まる時期に合わせて出荷時期を調整する |
菠薐草 | 長日植物 | 日照時間を長くすることで開花を早める 冬場でも成長を促進し、収穫時期を早める |
収穫時期を早め、計画的な供給を可能にする |
未解明な部分も多いメカニズム
植物が日照時間を認識する仕組みは、光周性と呼ばれ、そのメカニズムにはいまだ謎が多い点が認められています。植物の葉に存在する「フィトクロム」という光受容体が、この光周性に深く関わっていると考えられています。フィトクロムは、太陽光に含まれる赤色光と遠赤色光を吸収することで、その形状を変化させます。この変化が、植物体内で様々な生理反応を引き起こすスイッチのような役割を果たすと考えられています。
例えば、フィトクロムは、植物の開花ホルモンの生成や、茎の伸長、休眠などの重要な生理現象を制御しています。日照時間が長くなる時期には、フィトクロムは赤色光をより多く吸収し、植物に「夏が来た」という信号を伝えます。逆に、日照時間が短くなる時期には、遠赤色光の吸収量が増え、植物は「冬が近づいている」と認識します。
このように、フィトクロムは植物にとって、季節の変化を感知し、それに応じた成長戦略をとるために欠かせないセンサーの役割を果たしていると考えられています。しかしながら、光周性の全容がすべて解明されたわけではありません。フィトクロム以外の要素や、フィトクロムがどのように他の遺伝子やタンパク質と相互作用して複雑な生理現象を制御しているのかなど、まだ多くの謎が残されています。この複雑なメカニズムを解き明かすべく、現在も世界中の研究者が精力的に研究を進めています。
項目 | 詳細 |
---|---|
仕組名 | 光周性 |
役割 | 植物が日照時間を認識する仕組み |
メカニズム | 謎が多いが、フィトクロムという光受容体が関与していると考えられている |
フィトクロムの機能 | – 太陽光(赤色光と遠赤色光)を吸収し、形状変化することで植物体内の生理反応を制御する – 開花ホルモンの生成、茎の伸長、休眠などの重要な生理現象を制御 |
日照時間とフィトクロム | – 日照時間長→フィトクロムは赤色光吸収→植物は「夏」と認識 – 日照時間短→フィトクロムは遠赤色光吸収→植物は「冬」と認識 |
研究状況 | – フィトクロム以外の要素や、他の遺伝子やタンパク質との相互作用など、未解明な点が多い – 世界中の研究者が解明に向けて研究中 |