植物の生育に欠かせない微量要素:モリブデン
- モリブデンとは植物が健やかに育つためには、窒素やリン酸、カリウムといった主要な栄養素だけでなく、ごくわずかな量しか必要としない微量要素も欠かせません。モリブデンは、この微量要素のひとつであり、植物の生育に重要な役割を担っています。人間にとってのビタミンやミネラルのように、微量要素は少量ながらも植物の健康に欠かせないものです。不足すると、生育不良や病気など、さまざまな問題が生じる可能性があります。モリブデンは、土壌中に自然に存在していますが、その量は非常に少なく、植物が必要とする量に満たない場合も少なくありません。モリブデンは、植物体内において、硝酸 reductaseという酵素の働きを助ける役割を担っています。硝酸 reductaseは、植物が土壌から吸収した硝酸態窒素を、植物の体内で利用できる形であるアンモニア態窒素に変換するために必要な酵素です。この働きによって、植物はタンパク質や葉緑素など、生育に欠かせない物質を合成することができます。モリブデンが不足すると、硝酸態窒素の変換が滞り、植物は窒素不足に陥ります。窒素は、植物の生育に大きく関わる葉緑素の重要な構成要素であるため、不足すると葉の色が薄くなったり、生育が遅れたりするなどの症状が現れます。また、モリブデンは、植物の根粒菌による窒素固定にも関与しているため、不足するとマメ科植物の生育にも悪影響を与える可能性があります。