植物の恋愛事情:不和合性のお話
- 受精の謎不和合性とは?植物の世界にも、人間界と同じように複雑な恋愛模様が存在します。美しく咲き誇る花を咲かせ、健康な雌しべと雄しべを持っていても、必ずしも実を結ぶとは限りません。その原因の一つに、「不和合性」と呼ばれる現象が挙げられます。まるで相性が悪い二人のように、雌しべと雄しべが正常に機能しているにも関わらず、受精がうまくいかない現象、それが不和合性です。植物は、自身と遺伝的に近い花粉を識別し、受精を拒否する自己認識能力を備えている場合があります。これは、近親交配を防ぎ、より強い子孫を残すための巧妙な仕組みなのです。不和合性には、大きく分けて二つのタイプが存在します。一つは、「自家不和合性」と呼ばれるもので、文字通り、自分自身の花粉では受精しない現象です。もう一つは、「交雑不和合性」と呼ばれ、特定の組み合わせの相手の花粉とは受精しない現象です。これらの不和合性は、植物の種類によってその仕組みが異なります。例えば、雌しべの先端で花粉の発芽を阻害する物質を作り出すものや、花粉管の伸長を阻害するものなど、様々な方法で「お見合い」を断っています。不和合性の存在は、植物の育種においては、頭を悩ませる問題となることもあります。しかし、裏を返せば、不和合性の仕組みを解明することで、新しい品種を作り出すための技術開発にも繋がる可能性を秘めていると言えるでしょう。