盆栽の風格を高める「樹冠」の整え方
木々の頂上付近で、枝が葉を茂らせ、空に向かって広がっている部分を樹冠と呼びます。自然界の木々を観察すると、この樹冠の形は、木の年齢によって大きく異なることに気づきます。 若い木では、樹冠は天に向かって尖った形をしています。 これは、太陽の光をたくさん浴びて、ぐんぐん成長しようとする、若木ならではの力強さを感じさせる姿です。しかし、長い年月を経て老木になると、樹冠の形は大きく変化します。 老木になると、樹冠は尖った形から、全体に丸みを帯びた、まるで鍋底をひっくり返したような形に変化していきます。 これは、木の成長の仕組みに関係しています。若い木では、幹の先端にある頂芽と呼ばれる部分が盛んに成長することで、背丈が伸びていきます。しかし、老木になると、この頂芽の成長は衰え、代わりに、枝の側面にある側芽が成長するようになります。 そのため、樹冠は上方向ではなく、横方向に広がっていくのです。また、老木が丸みを帯びた樹冠を持つのは、厳しい自然環境に耐えるためとも言われています。丸い形は、風や雪の影響を受けにくく、木の幹や枝を守るのに適しています。 長い年月をかけて、風雪に耐えながら、安定した形に変化していく。 これもまた、自然の力強さを感じさせる現象と言えるでしょう。