発芽の鍵!タネの休眠『硬実』を理解する
- 硬実とは?
春の訪れとともに、土の中から元気な芽を出す植物たち。
しかし、中には適した環境になっても、なかなか芽を出さない種が存在します。
その理由の一つに「硬実」が挙げられます。
硬実とは、種の外側を覆う皮、つまり種皮が非常に硬くなってしまい、水分が内部まで十分に浸透しないために発芽が妨げられている状態を指します。
まるで、種が鎧を身にまとっているかのようです。
自然界では、この硬実は植物が生き残るための戦略として重要な役割を担っています。
例えば、雨が降った後など、一時的に条件が整ったとしても、まだ気温が十分に上がらないうちに発芽してしまうと、その後訪れる寒さで枯れてしまう可能性があります。
また、土壌の栄養状態が悪い時期に発芽しても、うまく成長できないかもしれません。
このような事態を避けるため、植物は硬実という手段を用いて、発芽のタイミングを調整しているのです。
種皮が硬い状態であれば、たとえ土に埋もれても、内部は乾燥から守られ、発芽に適した時期が来るまでじっと待つことができます。
そして、気温や水分量など、発芽に適した条件が揃った時に、ようやく種皮が水を吸収し、発芽が始まります。
硬実は、植物が厳しい自然環境を生き抜き、子孫を残すための、長い年月をかけて獲得した知恵と言えるでしょう。