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種間雑種:品種改良の秘策
- 品種改良と雑種 私たちが普段口にしている野菜や果物、そしてお米などは、すべて品種改良という技術によってより良いものに作り変えられてきました。品種改良とは、私たち人間にとって都合の良い性質を持った植物の品種を作り出すことを意味します。例えば、お米なら収量の多い品種や、病気になりにくい品種、果物ならより甘みが強い品種や、実の大きい品種などが挙げられます。 では、どのようにしてこのような優れた品種が生まれるのでしょうか?そのための方法の一つに「交配」があります。交配とは、植物の花粉を別の植物のめしべにつけて、新しい種を作る作業のことです。異なる性質を持つ植物を交配させることで、その両方の性質を受け継いだ子孫が生まれます。そして、その中から目的とする性質を持った個体を選んで、さらに交配を繰り返していくことで、より優れた品種が生み出されていくのです。 この交配には、大きく分けて二つの種類があります。一つは、同じ種同士を交配させる「種内交雑」です。例えば、コシヒカリというお米と、あきたこまちというお米を交配させる場合などがこれにあたります。もう一つは、異なる種同士を交配させる「種間交雑」です。例えば、みかんとオレンジを交配させる場合などが挙げられます。種間交雑では、より大きく異なる性質を組み合わせることができるため、新しい品種を生み出す可能性が広がります。 -
生命の設計図:染色体
私たちの体を構成する最小単位、それが細胞です。顕微鏡で覗くと、細胞の一つ一つの中心に、丸い核が存在するのがわかります。 この核の中には、「染色体」と呼ばれる、生命の設計図とも言えるものが収納されています。 染色体は普段、非常に細長い糸状の形をとっており、肉眼では到底見ることができません。あまりにも細く長いため、そのままでは細胞の核の中に収まりきりません。そこで、普段は糸がほどけた毛糸玉のように、複雑に折り畳まれた状態で収納されているのです。 しかし、細胞分裂の時期になると、染色体は大きくその姿を変えます。 それまで細長い糸状だったものが、ぐっと凝縮され、太く短い棒状になるのです。この状態の染色体は、顕微鏡を使えばはっきりと観察することができます。 まるで、細胞分裂という重要なイベントのために、設計図である染色体が準備を整えているかのようです。 -
植物の個性:形質の話
公園の花壇や道端に咲く花を見渡すと、色とりどりの姿に目を奪われますよね。背丈の高いもの、低いもの、花びらの形、そのどれもが少しずつ違っていて、まるで個性を持っているかのようです。 植物のこの多様な姿形や性質を決めているものを「形質」と言います。形質は、その植物の設計図とも言える「遺伝子」と、育つ環境である「気温」や「日光」、「水」、「土」などの条件が複雑に組み合わさって生み出されます。 例えば、皆さんが大好きなアサガオを思い浮かべてみましょう。アサガオの花の色には、赤や青、紫など様々な種類がありますよね。これはアサガオがもともと持っている遺伝子によって、赤い色素を作るもの、青い色素を作るものがいるからです。しかし、たとえ赤い色素を作る遺伝子を持っていても、土の酸性度が変化すると、花の色が変わることがあります。このように、同じ遺伝子を持っていても、育つ環境によって異なる形質が現れることがあるのです。 このように、形質は遺伝子と環境が織りなす、複雑で不思議な現象なのです。 -
魅惑の突然変異:個性豊かな植物たち
- 突然変異ってなんだろう? 生き物の世界では、親から子へと受け継がれる設計図のようなものがあります。これを遺伝情報と呼びます。 この遺伝情報のおかげで、私たちは親と似た姿形や性質を受け継ぐことができるのです。 しかし、ごくまれに、この設計図の一部が書き換わってしまうことがあります。これが突然変異と呼ばれる現象です。 突然変異が起こると、生物の姿形や性質に変化が現れます。 例えば、花の色が変わったり、体の大きさが変化したり、病気への抵抗力が変化したりすることがあります。 突然変異は、私たち人間を含む、地球上のあらゆる生物で起こりうる現象です。そして、突然変異によって生まれた新しい特徴は、進化の原動力の一つとなっています。 私たちを取り巻く多様な生物の世界は、長い年月をかけて積み重ねられてきた突然変異の結果生まれたものなのです。 -
未来への鍵!DNAマーカー育種とは?
昔から、人々はよりおいしい野菜やより美しい花を追い求め、品種改良に取り組んできました。経験豊富な生産者が長年の勘と経験に基づき、優れた性質を持つ品種を選んで交配させるという地道な作業でした。気の遠くなるような時間と労力をかけて、ようやく新しい品種が誕生するのです。しかし近年、この伝統的な品種改良の世界に革新をもたらす技術が登場しました。それが「DNAマーカー育種」と呼ばれる技術です。 DNAマーカー育種は、従来の方法とは異なり、遺伝子レベルで品種の選抜を行います。植物のDNAには、その植物の性質を決める膨大な量の遺伝情報が含まれています。DNAマーカー育種では、特定の性質に関わる遺伝子領域を「マーカー」として利用します。そして、このマーカーを目印にすることで、目的の性質を持つ品種を効率的に選抜することができるのです。 従来の品種改良では、実際に植物を育ててみないと、その性質を知ることはできませんでした。しかし、DNAマーカー育種を用いれば、種子の段階で目的の性質を持つ品種を判別することが可能になります。これにより、時間と労力を大幅に削減できるだけでなく、より効率的に品種改良を進めることができるようになりました。 DNAマーカー育種は、農業や園芸の分野において、まさに革命的な技術と言えるでしょう。 -
進化を紐解く、植物分類の最前線
植物の世界は、色とりどりの花々や、個性的な形をした葉など、驚くほど多種多様です。この多様な植物たちを整理し、理解するため、人は古くから植物を分類することに力を注いできました。これまで植物分類の主流となっていたのは、植物の姿形に着目した方法です。例えば、葉の形が似ている、花びらの数が同じ、根の張り方が似ているといった、目に見える特徴を手がかりに、植物を仲間分けしていくのです。この方法は、長年にわたる観察と経験の積み重ねによって築き上げられ、植物学という学問の基礎を築く上で、なくてはならない役割を果たしてきました。 しかし近年、遺伝子解析技術が飛躍的に進歩したことで、植物分類の世界に新たな波が押し寄せています。これまでの方法では分からなかった、植物の進化の歴史や、種同士の意外なつながりが、遺伝子のレベルで明らかになってきたのです。例えば、姿形が似ているため、これまで同じ仲間だと考えられてきた植物が、遺伝子を調べると全く異なる進化の道を辿ってきたことが判明するケースもあります。このように、遺伝子解析技術は、植物分類の概念を大きく揺さぶり、より正確で深い理解を可能にする、強力なツールとして注目されています。
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